先週、ロシア製vaccineが到着してパラグアイでもコロナ対策のワクチン接種が始まったことや、保険大臣Mazzoleni氏自らが医療従事者にワクチン注射を行う様子をお伝えしたばかりなのですが、今週はこれまでのコロナ対策に対する一部医療従事者が抗議デモを行い、週末にはデモの規模が拡大し、与党ANR本部前から大統領官邸 Mburuvicha Róga(ガラニ語で首長の家)にまで及んだ結果、Mazzoleni保険大臣が金曜日に辞任、続いて土曜日には大統領によって内務大臣・教育大臣・女性担当大臣の解任が発表されました。
ワクチンやその他衛生資材の確保が十分でないという一部病院関係者の指摘を政府の汚職問題として騒ぎ出したものにMazzoleni氏が嫌気して自ら職を辞したというものの様です。
前々から汚職の嫌疑が持たれていたり、コロナ禍の中の教育機能停止問題や多くの女性の生活苦問題に対する解決策を何ら提示せず、再開された学校のメインテナンス不足や対策資金不足等の諸問題を抱えていた教育大臣や女性担当大臣が、疑惑のデパートとも言われた内務大臣と一緒に葬り去られたと言える今回の更迭劇ですが、一連の更迭が発表される一日前に自ら職を辞したMazzoleni氏の行動は、難破船=現政権からの緊急離脱という風にも読み取れます。
2018年に発足したMario Abdo Benítez大統領が率いる現政権は、当初から Benítez氏を当選に導いたお友達の論功行賞ともいえるお友達人事と揶揄された閣僚人事で、行政機能が大幅に低下していましたが、コロナ禍の様な特殊な事態を切り盛り出来る人材が不足して、国民の怒りと失望を買っていることは否めない事実。その中で、着実に衛生環境改善や感染予防対策を行ってきた現役医師のMazzoleni氏は数少ないマトモな閣僚と見られていただけに、今行われている抗議運動が無用な犠牲を強いたように感じます。
また、昨日の抗議活動の映像を視ていると、「vencer o morir」(勝利か死か)という標語を掲げているデモ参加者の姿を見つけました。これは日本の明治維新の時期にパラグアイがブラジル・アルゼンチン・ウルグアイの三国を相手に戦った三国戦争の時の標語の様です。
しかし同時に、チャベス政権のベネズエラで強制的に接収された国営企業の至る所に「Venceremos! o Muerte!」というキューバ革命の標語が掲げられていたことを思い出させました。
キューバ革命達成の陰には、当時のソ連の支援があった訳ですが、今回パラグアイ各地で発生している騒動は、2017年3月末にIDB総会に乗じて当時のHoracio Cartes大統領の再選を廻る憲法改定議論の際に発生した国会議事堂焼き討ち事件と似た雰囲気を感じさせ、こうしたデモを動員する陰にパラグアイの親米政権にダメージを与えて難破させ、新たに親中政権を樹立させようとする大陸の動きが垣間見えるように感じられます。その証拠の一つに、昨日チリから2万人分の中国製無償ワクチンが到着したことが報じられています。
自国の感染拡大に歯止めがかけられない状態のチリが何故この時期に中国製ワクチンをパラグアイに無償提供してきたのでしょうか?
因みに南米有数の装備を誇るチリ海軍の標語も"Vencer o Morir"。
幸いにも、国民の多くは大統領官邸前の騒乱には同調せず、デモも極めて平穏に収束している様であり、パラグアイの穏健な国民性が遺憾なく発揮されたという印象をもたらす穏やかな週末です。
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