2013年4月14日
今日はチャベス前大統領の死去を受けて、ベネズエラの大統領選挙が行われています。
ペルーでも各新聞の一面トップはこの選挙の記事で、特に最大紙のEl Comercioでは「Maduro no respeta el silencio electral previo a elecciones」(マドゥロは選挙日前の運動禁止規定を無視した)と厳しく糾弾するタイトルを載せ、この選挙の不当性を示しています。
朝からテレビをつけて情勢をチェックしていますが、ペルー各局は投票の状況に関してはほとんど時間を割いていません。
半年前のチャベス対カプリレスの選挙では、反政府系の衛星放送局Globovisionがカプリレス陣営の様子を詳しく報じていましたが、その後この局は政府に買収され、既に国際放送を終了しており、今回の選挙の実況中継を行っているのはチャベス政府系のTelesurだけで、これは朝から各地の貧民街を中継し、この選挙が非常に民主的で、政府が設置した電子式投票機が民主選挙の透明性を後押ししている、と繰り返し喧伝しています。
しかし、この政府系テレビ局の報道を観ていても、時々映し出される中流市民の居住区では、朝から自慢の電子投票機の調子が悪く、投票所は終了時間直前まで長蛇の列が出来ているだけでなく、既に投票を済ませた貧民街の女性が何故かこの列に並んで順番を待っている様子が報じられていました。(これは明らかな投票違反行為ですが、生中継ということで、映ってしまったという感じです。)
また、El Comercioの電子版では、「Venezuela: Capriles pide a electores que denuncien "los atropellos" del chavismo」(カプリレスは大統領派による制度の蹂躙を投票者に訴える)との記事が掲載され、ペルー世論がチャベス派にきわめて強い拒否感を持っていることを示しています。
また、電子版の二番目の記事として「venezolanos en Lima esperan un cambio en su país」(リマ在住のベネズエラ人達は祖国の変化を望む)として、在外ベネズエラ人の言葉を借りて、政権交代が起こることへの期待を寄せています。
ただ、あと数時間で結果が発表されるこの選挙、今回もまた、直前の大きな盛り上がりとは裏腹の規定路線の発表が行われて南米中に後味の悪さを残すものになりそうです。
一方、当地ペルーに関する記事としては、金曜の記事に「Perú es un "paraíso laboral" para los extranjeros, según publicación suiza」(ペルーは外国人労働者にとっての天国とスイス紙が報道)という記事が掲載されました。
この記事によると、15年前にはリマは外国人にとって観光地クスコに行くときに通る通過点に過ぎなかったが、今や様相は激変し、不景気な欧州はじめ世界中から仕事を求める外国人が集まっている、とされています。
以前も書きましたが、最初のベネズエラ駐在(‘88-93年)の時には、ベネズエラの景気が良く、下働き中心のコロンビア人をはじめ石油や金属の仕事を求めて米国や欧州から多くのホワイトカラーが移住していましたが、今やそうした外国人技術者だけでなく、ベネズエラの優秀な技術者達も身の危険を避け、
より安定した生活を求めて逆に隣国コロンビアやシェールガス・オイルに沸くカナダ・米国に移り住んでいます。
そして、金属資源を中心とした好景気のお蔭で、かつては危険・きつい・汚いという3Kの代表と言われたペルーが、労働者の楽園に生まれ変わったという事実は、逆に10年・20年の時間軸で観察すると、今の状況が大きく変化する可能性をどの地域も持っていることを示唆しているように思います。
因みに下の写真はかつて水産資源国と言われたペルーの漁業を支えたカタクチイワシ(Anchoveta)漁の様子ですが、今年は例年に比べ漁獲量が激減している上に、価格が上がり過ぎて景気の良い中国が買占め、伝統的輸入国であった日本への出荷は大幅に減っているとのこと。長年の円高と長期にわたるデフレ経済で楽園慣れした日本の皆さん、ベネズエラの二の舞にならないように政治家の甘言にはご注意下さい。 📷
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