ベネズエラの言葉 Leche(レチェ)=牛乳 英:Milk
- Kaz Suzurida
- 2011年10月7日
- 読了時間: 3分
2011年10月7日
久々に物価の話題です。久々と言っても、新聞やテレビでは頻繁に報じられているものの、毎週値上げの話をする訳にもゆかないので、控えていました。
今週はほぼ毎日紙面を賑わせていた話題なので、ご紹介します。
先ずは水曜日の紙面版の一面トップ記事「Leche pasteurizada subio 40% y el aceite mas de 30%」(低温殺菌牛乳40%、食用油30%以上値上げ)で、牛乳900ccの値段がBsF.5.83になった、と報じています。
公定レートBsF.4.3/$で計算すると、100円強。日本の牛乳は1リットル入りですが、ベネズエラでは900cc、この違いを織り込むと約120円で、日本よりも若干安い、という感覚に陥りますが、実際にはスーパーで牛乳を確保するのが至難の技で、多くの消費者は割高なロングライフ包装の輸入品(主にエクアドルから輸入)を購入しています。
しかし、何故かこの後報道に修正が入り、逆に乳価はBsF.5.83からBsF.5.5に値下げする、と政府の発表がありました。原乳に至ってはBsF.3.35からBsF.3に10%の値下げとのことで、生産も流通も大いに混乱しています。既に牛乳も食用油も調達困難な食品リストのトップにありますが、今後は益々見つけることが難しくなるでしょう。
📷既にクリスマスの装飾が施されたスーパーのレジ風景。
さて、木曜昼にはチャベス大統領が一週間ぶりでテレビに登場し、オリノコ川流域のタールベルトから産出される超重質油の生産を、ロシアの技術協力を得て大幅に増やす、という話を現場に出向いたラミレス大臣と中継で結んで大統領府から自慢げに説明していました。
この手の話は、計画が頓挫したオフショアガス田計画の時も含め、時々宣伝目的で放送されるのですが、視ている側からすると、「また政府の宣伝だ」という程度の受け止め方でしかありません。
ただ、大統領の健康状態が必ずしも万全でないこの時期に、なぜ、今日のタイミングでこうした放送を行ったのか?と訝しく思っていると、事務所に戻ってきた運転手が「CAPの葬儀で道が大渋滞、帰ってくるのが大変だった」と言っており、謎が解けました。
CAPというのは、'74~'79年と'89~'93年の二回に亘ってベネズエラの大統領を務めたCarlos Andrés Pérez氏の略称で、チャベス大統領が'92年にクーデターを起こした際の政権トップであった人物です。CAP氏は昨年12月に亡命中のマイアミで亡くなりましたが、今週遺骨が帰国して、反対派主導の大規模な葬儀が行われたものです。
CAP氏はベネズエラの黄金時代と言える'70年代に一期目の大統領となり、人気を博したものの、二回目の'89年には就任早々全国規模の暴動を引き起こす経済政策のミスリードに直面し、その後'92年の2月と11月にクーデター未遂(2月がチャベス氏主導)に直面して、汚職の噂にまみれて'93年に辞任を余儀なくされた点で、必ずしも最後まで人気を保った訳ではありません。しかし現大統領も固執するBsF.4.3/$という”強い通過ボリーバル”を演出したことなどで、懐古派にとっては重要な人物であったと言えます。逆に言えばチャベス大統領が最も嫌っている政敵であった訳です。
その人物の葬儀が行われた訳ですから、現政権側としては絶対にテレビ中継を行わせないようにする為に、なんら目新しさの無い案件紹介の為に、全チャンネルを通じて妨害放送を行った、ということでしょう。
📷CAP元大統領の葬儀
こうした政治的鞘当に直面しながらも、国民は普段と変わらない生活を送っていて、牛乳や食用油・ガソリン等の必需品に逼迫した暮らしを淡々と過ごしています。
来週は次男の通うインター校が秋休みなので、今夜のフライトで混沌のベネズエラを離れ、旧宗主国スペインでラテンアメリカとの現関係を観察して来ようと思います。
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