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  • 執筆者の写真Kaz Suzurida

ブラジルの言葉 Cúpula(クプラ)=円天井、ドーム、首脳会談 英:Summit 西:Cumbre

2015年4月11日

今日の言葉Cúpulaは、以前ベネズエラからCumbreとして取り上げたことがありますが、今回パナマで開催されている首脳会談Cumbre de las Americas(米州首脳会議)は、日本でも報道されている通り、米国とキューバの首脳が国交回復について話し合うという点で、正に歴史に残る重要会議となります。

これまで中南米諸国は米州の盟主として時に横暴にふるまう米国に対して様々な嫌悪感を示し、何とか米国の影響力から逃れよう、と努力してきました。


その動きは第二次世界大戦後の共産革命から始まり、当時米国の富裕層にとっての保養地であったキューバで1958年末に成立したキューバ革命を端緒として、南米各地に飛び火し、現在のベネズエラを基軸とする反米同盟に結び着いています。


そして常にそうした反米勢力を支えていたのがソ連(現ロシア)や中国からの支援を背景として米州の中央で君臨するカストロ・キューバであった訳です。


ベネズエラの反米などは、実は99年のチャベス政権から16年の事なので、実は歴史的には短いもので、ペルーで駐在していた時に聞いて驚いたのが1968年から75年のベラスコ反米軍事政権の時代には、米国文化の影響を排除するために、音楽も禁止されていたとのことで、我々と同世代の当時の若者たちは周囲に隠れて米国音楽を聴き、映画の鑑賞は出来なかったとのこと。それに比べれば今のベネズエラは文化な制約は少ないので、その点はマシですが、一方で勘違いした社会主義の徹底と言うゆがんだ政策が15年以上も続いている結果、物資の欠乏は信じられない程激しくなっています。


そして、今週あらたに外国に渡航する際に持ち出せる外貨の金額が大幅に下げられ、例えば7日間アジアに旅行する際に持ち出せる外貨は僅か1,000ドル(これまでは2,000ドル)となってしまいました。

今丁度家内と長女が一時帰国中なのですが、桜の時期に東京でホテルを探したところ、普段1万円以下で宿泊できるアパホテルですら3万円以上の高値が付いており、こんな時期にはとてもベネズエラから日本には行けなくなったことになります。

📷📷📷地域と滞在日数によって決められた持ち出し外貨の上限一覧表

ただ振り返って観れば、日本でも海外旅行が自由化された僅か(?)50年余前は持ち出し外貨の制限が年間500ドルであった訳で、カネが無いのだから制限は当たり前、という発想は正しいのかも知れません。

チャベス前大統領はキューバ国民の質素な暮らしに感銘を受け、キューバのシステムをそのまま自国に持ち込もうとした訳ですが、元々ニッケル鉱山とサトウキビ畑しか資源の無いキューバは、近隣の超大国である米国との国交を断った時から窮乏生活を余儀なくされることを前提に革命を実行した訳で、世界有数の石油や鉱物資源に恵まれたベネズエラにこうした仕組みを適用しようとすれば、逆に汚職の温床を増やすだけ、と言うことに気付かないままチャベス氏は故人となり、温床の中で権力だけを継承した現政権が不毛な社会主義革命を唱えながら反米を訴え続けてきました。


また、ブラジルでも選挙権者の太宗を占める貧困層からの票を目当てに労働者党が2003年から12年間バラマキ政策を採って政権を運営、偶々資源ブームの中にあってあたかも経済運営にも成功したように見えたものの、資源バブルの最中に巨額な賄賂が横行し、これが今日の社会的麻痺状況をもたらした訳で、清貧なキューバの社会主義は、同様に元々貧しかったボリビアやエクアドル等ではある程度の成功をおさめられたものの、ブラジルやベネズエラの様に元々物質文明に毒され、支配者層が搾取する構造の社会においては混乱を助長するだけに終わったと言えます。


こうした状況の中、今回のパナマサミットで米国とキューバが国交を回復すると、中南米における社会運営の機軸を何に置くのか?精神的模範を失う極左を標榜する諸政権は迷走を始めることになりそうです。今日のFolha紙の一面でも、パナマ発のニュースは一面を飾っています。(トップ記事は相変わらず巨大汚職事件=Lava Jatoに関するものですが。)

まだ、首脳会談の結果が入っていない現段階では希望的憶測でしかありませんが、今日2015年4月11日が米州の新しい歴史の始まりの記念日になることは間違いないと確信しています。

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