2017年6月24日
パラグアイが投資に適した国との印象をこれまでも繰り返しお伝えしていますが、政治的な安定性という観点では、必ずしも盤石とは言えません。
現カルテス大統領がつい最近まで憲法を改正して再任可能にしようと意図してきた結果、3月末に国会玄関に放火し、セントロで反対派が騒乱を起こす事件が発生したことは記憶に新しいものです。
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また、五年前に議会によって解任されたLugo元大統領が来月から国会議長に就任することになり、今週はUltima Hola紙が「何故Lugoは解任されたのか?」という特集記事を掲載していました。
牧師という珍しい経歴で主要政党の出身でもなく大統領に上り詰めたLugo氏のことは、正直言って殆ど存知ないので、あくまでも聞きかじった話を基にパラグアイ政治のリスク要因について話を進めます。
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宗教者であるFernando Lugo氏は、ともすると大衆迎合型とも思われる政治姿勢で低所得者層の支持を得て2008年の選挙で当選を果たしたものの、任期途中の2012年6月に議会によって解任されました。上記のUH紙の解説によれば、社会主義的な性向が強く、財政的な根拠のないまま大衆の権利を主張し、一部の土地の自由化等も先導しようとして、財界や知識層から糾弾されて罷免に至ったとのこと。ただ、この際に「ブルジョワ的国会による不当なクーデター」としてLugo氏救済のためにはるばるカラカスから飛んできて国会批難演説をぶったのが、当時外務大臣の任にあったマドゥロ現ベネズエラ大統領でした。
パラグアイ議会によるルゴ大統領の解任は、憲法の手続きに則って行われたものであり、憲法を勝手に変えて自党の利益の為だけに動くチャベス軍団の番頭に、勝手な演説をぶたれて不快感を示したのがパラグアイ伝統の大政党コロラド党幹部で、実業家のカルテス氏を担いで政権を奪取したあとは、ベネズエラ政府の不当な運営に厳しい批判を続け、ベネズエラの正常化のために重要な役割を演じています。
そのベネズエラは、明らかな票操作で2011年の大統領選挙をチャベス氏を三選に導き、氏が逝去した2013年の選挙も同様の手法で後継者マドゥロ氏を大統領に担ぎ、その後の国会選挙で政府が大敗を喫した後も、不法に任命した最高裁を操って国会を機能停止に追いやり、今回改めて自己都合の憲法改正を目指して改憲議会なるものを設置しようとして国民の大反対に遭い、国内が3カ月に亘って機能停止状態になっていることは報道でも取り上げられている通り。
しかし、パラグアイでもチャベス氏と同一思想のルゴ氏が下院議長として復権を果たし、隣国アルゼンチンではチャベスの盟友クリスティナ・フェルナンデス前大統領がマクリ政府による改革の痛みに耐えられない低所得者層の指示を増やしている事態は看過できない情勢です。
ルゴ氏が頂点に立つ新国会が如何なる方向を目指すのか、長期的な投資の安全性を見極めるためにも注視が必要です。
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